「お兄ちゃーん!」
妹のとてつもなく大きい声が今日も我が家に響き渡った。
俺の鳥
「どうしたんだミカ」
妹のミカは今にも泣きそうな形相で俺の部屋に入ってきた。
「あのね、お外で遊んでたらね、悪い鳥さんにコツコツってされたの!」
「はぁ?」
ミカは ほら、とでも言うように自分の腕を見せてきた。腕からはうっすらと血が出ていた。俺は、鳥に突付かれたのかと理解した。
「大丈夫だって。これくらいの傷ならすぐ治るよ。」
「でも痛いの〜!!」
ミカは泣き叫び始めた。俺は困り果ててしまう。
慰めているうちに、親が駆け寄ってきた。
「ザウバー、ミカ!どうしたの?」
母さんがミカに駆け寄った。
「外で遊んでたら、鳥に突付かれたんだって。」
「そうだったの、痛かったね。お母さんが、すぐに直してあげるからね。」
「いたいのいたいのとんでけー」とか言いながら、母さんはミカの傷に薬を塗った。その薬はとても染みるらしく、ミカは俺の手をつかんで離さなかった。
「よし、コレで大丈夫!」
母さんは薬をしまって部屋を出た。
「お兄ちゃん、痛いよぉ。」
ミカが俺に抱きついてきた。ミカの顔は、涙で濡れていた。
「よくがんばったな。ミカは強い子だもんな!」
俺はミカの頭を撫でた。
「うん!」
ミカの顔に笑顔が戻った。
「でも、なんで鳥なんかに突付かれたんだ?」
たぶん、ミカのことだから雛鳥を捕まえようとしたのだろう。
「あのね、木に登ってたら鳥さんの巣があってね、その中にちっちゃい鳥さんがいたの。」
「ちっちゃい鳥さん?雛のことか。それで?」
「お兄ちゃんに見せようと思って、ちっちゃい鳥さん捕まえようとしたら、悪い鳥さんが出てきてね・・・。」
やっぱり。予想は的中。でも、俺に見せようとしてたなんて思いもしなかった。
「それは、ミカが悪い。悪い鳥さんも、ちっちゃい鳥さんを守るのに必死なんだよ。」
「でも・・・。」
「俺のために捕まえようとしてくれたんだよな。ありがとう。」
「お兄ちゃん・・・。」
「お返しに、俺はミカを守ってやる。ずっと、ミカが大人になるまで守ってやるからな。ミカはちっちゃい鳥さんだな!」
ミカの頭を撫でてやる。ミカはうれしそうな顔をした。
「うん!・・・それじゃ、お兄ちゃんは悪い鳥さんだね!」
「え・・・。俺、悪い鳥・・・?」
「嘘だよ。お兄ちゃんはね、ミカのこと守ってくれる、かっこいい鳥さんだよ!」
ミカの言葉に、俺の口元も緩んだ。うれしそうな顔をしていたかもしれない。いや、正直、本当にうれしかった。
「そうだ!お兄ちゃんに、ちっちゃい鳥さん見せたげる!」
ミカは俺の手を引っ張った。
「ミカ!そんなに引っ張るなって。」
「お兄ちゃん、早く早く!」
俺は、ミカに連れられて、鳥の巣がある木へ走った。
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後書き
とりあえず、現代より12年位前を想像しました。
ザウバー10歳、ミカ4歳です。
この当時はザウバーだってまだまだ無邪気なんですよ。
きっと。
ていうか、そうだといいなあって。
めずらしく、台詞を色で分けたりしてみましたよ。
あまり目が痛くならない色を選びました。
でも、母の色は結構痛いと思う・・・。
10/11(水) セリハ